養育費の相場はいくら?算定表やトラブルへの対処法についても解説

「子どもを連れて離婚するけど、養育費の金額の相場はいくらくらいなの?」

養育費の金額は、裁判所が作成した「養育費算定表」を参考にして話し合って決めることが多いです。
子どもの両親による話合いがまとまらなければ、最終的には裁判所が金額などを決定することになるでしょう。

もっとも、「養育費算定表」はあくまでも基準ですから、必ずしも基準どおりにしなければならないわけではありません。
養育費は、相場をふまえてしっかりと金額を検討したうえで、将来支払われなくなった場合に備えてできる限りの対策を取っておくことが大切です。

このコラムでは、養育費の相場や取り決める際のポイントなどについて弁護士が解説します。

養育費の基礎知識

養育費とは、衣食住の費用・教育費・医療費など子どもを育てるために必要な費用のことです。
養育費を支払う義務は「自分の生活を保持するのと同程度の生活を、子にも保持させる義務」(生活保持義務)で(民法第877条1項)、「余裕があるときに支払えばよい」という性質のものではありません。

私が子どもを引き取ることになりましたが、前夫が「生活が苦しい」と言って養育費を支払いません。
生活が苦しい場合には、養育費は支払わなくてもいいのですか?

自分の生活が苦しいからといって、養育費の支払義務は免除されません。養育費は、自分の生活水準を下げてでも支払う必要があります。

参考:養育費|法務省

詳しくは「子どもの養育費」もご覧ください。

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養育費の相場

後述するとおり、妥当な養育費の金額は算定表により簡単に確認できますが、実際の養育費は、家庭の状況によってさまざまです。

厚生労働省による「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によれば、母子家庭が実際に受け取っている養育費の平均額は次のとおりです。

<母子世帯の平均養育費(月額)>
子ども1人:4万468円
子ども2人:5万7,954円
子ども3人:8万7,300円

もっとも、この金額は「実際に養育費を受け取っている母子世帯」の平均であり、離婚すれば確実にこの金額を受け取れるわけではなく、そもそも養育費を受け取っていない母子世帯も多いためご注意ください。
参考:令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告|法務省

養育費はどう決まる?考慮される要素と計算方法

養育費は基本的に、まず両親の話合いによって決めます。

養育費の金額を算定する際に考慮される要素や、裁判所が公表している「算定表」をもとに話し合うことが一般的です。

養育費の算定で考慮される要素

養育費の金額を算定する際に考慮される要素は、たとえば次のとおりです。

・子どもの人数
・子どもの年齢
・両親の収入や職業
・その他、個別具体的な事情(子どもに持病があり多額の医療費がかかる、など)

養育費算定表を参考にする

養育費算定表は、妥当な養育費の算定が簡易にできるように作成・公表されたものです。
実務上、全国で広く利用されており、両親の年収(養育費を受け取る側が「権利者」、養育費を支払う側が「義務者」)を、それぞれ縦軸と横軸に当てはめると、交差するマスが標準的な養育費の額を示すようになっています。

子どもの数と子どもの年齢別に複数の養育費算定表が存在するため、自分のケースに当てはまる算定表を参照してください。

なお、当事者間で話合いがまとまらなかった場合には、裁判所を介した手続により、最終的には裁判所が金額を決定します。

参考:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所 – Courts in Japan

子どもが1人の場合の年齢・年収別の養育費の相場(目安)

養育費算定表を参考に、子どもが1人の場合の養育費の相場(目安)をご紹介します。

【養育費の相場(子どもが1人・0歳~14歳の場合)】

養育費をもらう側の人の年収(サラリーマン)
200万円300万円400万円500万円600万円700万円
養育費を支払う側の人の年収(サラリーマン)200万円月1~2万月1~2万月1~2万月1~2万月1~2万月1~2万
300万円月2~4万月2~4万月2~4万月2~4万月2~4万月2~4万
400万円月2~4万月2~4万月2~4万月2~4万月2~4万月2~4万
500万円月4~6万月4~6万月2~4万月2~4万月2~4万月2~4万
600万円月4~6万月4~6万月4~6万月4~6万月2~4万月2~4万
700万円月6~8万月6~8万月4~6万月4~6万月4~6万月4~6万

【養育費の相場(子どもが1人・15歳以上の場合)】

養育費をもらう側の人の年収(サラリーマン)
200万円300万円400万円500万円600万円700万円
養育費を支払う側の人の年収(サラリーマン)200万円月1~2万月1~2万月1~2万月1~2万月1~2万月1~2万
300万円月2~4万月2~4万月2~4万月2~4万月2~4万月2~4万
400万円月4~6万月2~4万月2~4万月2~4万月2~4万月2~4万
500万円月4~6万月4~6万月4~6万月4~6万月4~6万月4~6万
600万円月6~8万月6~8万月4~6万月4~6万月4~6万月4~6万
700万円月8~10万月6~8万月6~8万月6~8万月4~6万月4~6万

個別の事情によっては算定表の金額から増額(減額)されることもあります。

自分の場合はどれくらいの養育費の金額になるか、目安を知りたい方は、「養育費かんたん自動計算ツール」をご覧ください。

養育費が相場より高くなるケース

算定表から導き出した金額よりも高い養育費が認められるケースもあります。
たとえば、子どもの持病により継続的に医療費がかかると予想されるケースや、子どもが私立の学校に通っているケースなどです。

ただし、裁判所が養育費の金額を決定する場合、さまざまな事情を総合的に考慮するため、上記のような事情があったからといって、必ずしも算定表よりも高い金額が認められるとは限りません。

一度取り決めた養育費は変更されることもある

養育費を話し合って取り決めた場合でも、あとになって取り決め時点では予測できない大きな事情の変化が生じた場合には、養育費の増額または減額を請求できることがあります。
たとえば、次のような場合です。

【個人的な事情の変化】
・勤務する会社の倒産による失業
・親や子どもの病気、ケガ
・再婚     など

【社会的な事情の変化】
・急激なインフレなど

元夫が再婚して、再婚相手との間に子どもができたようです。私が受け取っている養育費に影響はありますか?

養育費の支払義務のある親に、新たな子どもが生まれるなどして扶養家族が増えた場合、養育費の減額理由になり得ます。

私が再婚することになった場合はどうですか?

お子さんがあなたの再婚相手と養子縁組をし、再婚相手に扶養される立場になった場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。

ただし、いったんは養育費について合意したものの、相場より安い(高い)金額で合意してしまったからといって、それを理由に養育費の増額(減額)をあとから請求することは難しいと考えられます。
合意した金額が相場より安い(高い)ことは、事情の変化とはいえないからです。

養育費の取決め方法

それでは、養育費について取り決めるべき内容やポイント、状況別の対処法についてご紹介します。

取り決める内容

まず、養育費について取り決めをする際、養育費の金額や支払終了時期などを具体的に決めることが大切です。
取決め内容が抽象的だったり、支払期間をあいまいにしてしまったりすると、その解釈をめぐってのちのちトラブルが生じる可能性があるためです。

たとえば、養育費の支払終了時期は「18歳まで(成人するまで)」なのか「大学卒業まで」なのかなど、具体的に決めておくことをおすすめします。

話合いでは、次の内容を具体的に取り決めておきましょう。

・養育費の金額
・1人あたりの金額か、全員分なのか(子どもが複数いる場合)
・支払期間(何歳になるまで支払うのか)
・支払方法
・銀行振込みであれば、口座情報
・振込手数料の負担(通常は振り込む側が負担します)

取り決める際のポイント

養育費についての話合いがまとまったのであれば、その内容を公正証書として作成しておきましょう
公正証書とは、公証人が法律に従って作成する公文書のことです。
強制執行認諾文言を記載した公正証書があれば、将来的に養育費の支払いが滞ってしまっても、スムーズに差押えなど強制執行の手続をとることができます。

なお、強制執行認諾文言は、金銭を支払うという債務の履行に対してのみ記載することが可能です。この点、養育費の支払いは、金銭の支払いにあたるため、強制執行認諾文言を記載できます。

話合いができない・相手が応じない場合の対処法

話し合っても養育費の取り決めができない場合や、相手が話合いに応じない場合には、家庭裁判所での手続を利用して、養育費の支払いを求めることになります。

離婚前で離婚したい場合

夫婦関係調整調停(離婚)を申し立てて、離婚についての話合いに加えて、養育費などの離婚条件についても話し合います。
すでに相手と別居している場合には、次に説明する婚姻費用の分担請求調停も申し立てます。

参考:夫婦関係調整調停(離婚)|裁判所

別居はしているものの離婚は迷っている場合

婚姻費用の分担請求調停を申し立てます。
婚姻費用には子どもの生活費が含まれているため、婚姻費用の話合いをするなかで子どもに関する費用についても話し合います。
参考:婚姻費用の分担請求調停|裁判所

すでに離婚している場合

養育費請求調停を申し立てて、養育費について話し合います。
参考:養育費請求調停|裁判所

調停を申し立てるには、印紙代や切手などの費用がかかります。
家庭裁判所によって金額が多少異なりますので、詳しくは相手の住所を管轄する家庭裁判所に問い合わせましょう。

養育費が支払われない場合の対処法

養育費については、両親が納得するまで話し合って合意し、その後も問題なく支払われるのが望ましいです。
しかし実際には、合意したとおりに養育費が支払われないなどのトラブルが生じることも多くあります。

養育費が合意どおりに支払われない場合には、次のような裁判所の手続が利用できる場合があります。

(1)強制執行
(2)履行勧告
(3)履行命令

詳しくは「未払いの養育費は放置せず請求を!請求方法や履行勧告などの詳細を弁護士が解説」をご覧ください。

また、弁護士に相談すれば、事案の内容に応じた適切なアドバイスが期待できます
たとえば、いきなり強制執行の手続をする前に、交渉によって自主的な支払いを求めるべきか、裁判所による履行勧告の手続を利用すべきか、などについて適切なアドバイスをもらえるでしょう。

上記(1)~(3)の対処法をとる前に、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

【まとめ】子ども1人の場合、母子世帯が受け取っている養育費の平均額は約4万円

厚生労働省の調査では、母子世帯が受け取っている養育費の平均額は約4万円(子ども1人の場合)となっています。

養育費は、まずは子どもの両親が話し合って決めるのが一般的です。
話合いがまとまらなければ、最終的には家庭裁判所が決めることになるでしょう。
その際には、裁判所が作成している「養育費算定表」が基準になると考えられるため、算定表の金額が一応の相場といえます。
なお、個別の事情によっては算定表よりも高くなることも安くなることもあります。

養育費についての話合いがまとまりそうにない場合や、すでに養育費についての合意があるものの、合意どおりに支払われない場合などには、弁護士に相談するとよいでしょう。

離婚や養育費を請求したくてお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

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この記事の監修弁護士
林 頼信
弁護士 林 頼信

どのようなことに関しても,最初の一歩を踏み出すには,すこし勇気が要ります。それが法律問題であれば,なおさらです。また,法律事務所や弁護士というと,何となく近寄りがたいと感じる方も少なくないと思います。私も,弁護士になる前はそうでした。しかし,法律事務所とかかわりをもつこと,弁護士に相談することに対して,身構える必要はまったくありません。緊張や遠慮もなさらないでくださいね。「こんなことを聞いたら恥ずかしいんじゃないか」などと心配することもありません。等身大のご自分のままで大丈夫です。私も気取らずに,皆さまの問題の解決に向けて,精一杯取り組みます。

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